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上ノ廊下横断 後編
黒部川最上流、上ノ廊下に降り立った。流れは緩いが思ったよりも水量が多く一瞬怯む。 過去の記録では膝程度の水深とあったがとんでもない。 冬期徒渉の経験が豊富な和田先輩が先陣を切って突入する。装備を濡らすことは絶対に避けなければならないので、裸+下半身はビニールカッパとネオプレンソックスで徒渉する。服を脱いだ瞬間から震えが止まらないし、水に入ると心臓がおかしくなりそうだ。しかし、渡り終えるころにはアドレナリン全開なのであまり寒さは感じず、その隙に服を着てしまうのがコツ。腰まで水深があるので流れが緩くてもさすがに持っていかれそうになる。冬期黒部川寒中水泳は耐えられないのでけっこう必死で踏ん張った。 一人徒渉するとチロリアンブリッジで装備を渡し、また一人徒渉する。装備渡しは小分けにして何回も行う必要があり、この作業に2時間少々かかったがトラブルなく無事に渡り終えた。渡り終えたということは既にここからの脱出は容易でなくなったということでもある。 この日は河原で幕を張った。 30日、断続的に雪の降る中、中央稜に取り付く。下部は急な樹林帯だが序盤でロープを出し
10月15日


上ノ廊下横断 前編
登山を包括的に、深く探求するハードコアクライマーの間で昔から取り組まれてきた課題がある。それが「冬期黒部横断」だ。 信州側の後立山連峰を超えて黒部渓谷の谷底まで下り、再び富山側の立山・剱連峰を超える「横断」である。 どこをどう繋ぐか、ルートの組み合わせはたくさん考えられ、それによって難易度も大きく変わる。そのルートの中に各パーティが自らの目標とするリッジや壁や厳しい徒渉を組み込むのだが、冬の黒部でそれらが達成されることは稀だ。何故なら非常に厳しい豪雪環境と隔絶を余儀なくする深く険しい地形により、黒部の谷底に入り込んでしまえば結局はそこから脱出することに全ての力を注がなくてはならないからだ。また、予備日を入れると20日にも及ぶ山行期間と長い移動距離故に計画が順調に進むことも少ない。 その経験のなかで、我々はいつもの山行よりも更に一層自然に対して畏敬の念を抱き、自分の存在のあまりの弱さから自身の命の輝きを感じることができる。 それが理由かはわからないが、黒部に限らず「横断系」の山行に魅了されるクライマーは後を絶たず、私もそのひとりだ。...
10月15日
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